Gunosy Blockchain Blog

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Crypto Assets に対する定性的な評価

はじめに

こんにちは! 新規事業開発室の山口 (@yamarkz) です。

前回の「ICOプロジェクトとCrypto J Curve」に続いて、今回も投資の話を紹介します。

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Cryptoへの投資は2016年頃から大きく注目を浴びる様になってきました。最近では主要なベンチャーキャピタルも投資を開始したり、Cryptoを専門に投資を行うCrypto Fundも登場してきています。 本記事では、そんな投資を専業としている人たちがCrypto(主にICOプロジェクト)に対して投資を行う際に、プロジェクトをどの様な観点で評価しているのかを紹介していきたいと思います。

※ 今回紹介する評価軸はあくまで筆者がいくつかのCrypto関連投資機関を調査し、公開されている情報などを整理してまとめたものであり、この評価軸は一例でしかありません。

Crypto Assetsに対する評価

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Cryptoを専門に投資を行う、海外のベンチャーキャピタリストの多くは、投資先の金融商品(ICO時のトークンなど)を「Crypto Assets」という表現で呼んでいます。本記事もその表現に習い、ICOなどで発行される「トークン」もしくは、ブロックチェーン技術を使った「暗号通貨」を総じて「Crypto Assets」と表現することにします。

Crypto Assetsに対して投資判断を行う際に見るべき評価の観点は大きく2つあります。それは上記の図にもある通り、「定性的な評価」「定量的な評価」です。 この2つの評価軸をさらに細分化した評価軸があり、その軸に評価対象のプロジェクトを当てはめて評価を行なっています。評価はスコアとして最終的にどれも定量的に図られます。 また、この2つの評価には重み付けがあり、本記事執筆時点では「定性的な評価」を重視して評価する傾向にあります。「定量的な評価」の方法に関しては、昨年の夏頃から海外で活発に議論が行われる様になってきました。 活発な議論が進んでいるものの、Crypto自体がまだまだ未成熟な状況であり、提案されている評価決定論の多くには課題が残っています。海外の主要なベンチャーキャピタリストの多くは、「定性的な評価を重視し、定量的な評価はあくまで補足的な思考材料としてとらる方が良いでしょう」と述べています。なので、定性的な評価を重視して投資分析を行なっています。

定量的な評価方法については下記記事で紹介しています。

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Crypto Assetsを定性的に評価するための5つの評価軸

Crypto Assetsを定性的に評価するための軸は5つあります。

  • Team
  • Product
  • Community
  • Token Mechanics
  • Merket Selection & Timing & Suitability

Team

評価軸が5つある中で最も重要な評価軸は、プロジェクトに関わるチームに対する評価です。これをさらに細分化すると、それはプロジェクトに関わる「人」に対する評価です。 なぜチームに関わる人に対する評価が最も重要であるかというと、それはプロジェクト自体が人の考えが生み出したものであり、それらを「良い方向」や「悪い方向」に進めことは全てチームメンバーの行動に大きく依存するからです。 Cryptoのプロジェクトチームは従来のスタートアップよりも高度なスキルと高度な知識、それと経験が求められます。それはブロックチェーンという複雑な技術を活用し、トークンと呼ばれるデータを元にユーザーの行動を正しい方向に導くルールを新たに構築しなければいけないからです。 また、多くのプロジェクトは初期にICOを実施し、グローバルな環境で資金調達を行います。これは従来の株式による資金調達よりも容易に多額の資金を調達する手段として優れています。しかしその代償として、健全なコミュニティ育成とプロダクト開発に対する透明性と速度が求められる様になります。

チームの評価

  • 成功の歴史、成功への障害を乗り越える能力、お金を超えた強い欲求がありますか?
  • ビジョンとリーダーシップに触発された最高の技術的才能を引き付け、包囲していますか?
  • 彼らが解決している問題について強情はありますか?
  • 成熟した思考者 - 問題について深く考え、現実的な成長計画を考えているか?
  • チームは技術的問題に取り組むのに唯一適していますか?

Product

プロダクトは既存の課題を解決する具体的な解決策(手段)です。プロダクトを評価する上で注目すべき点は、そのプロダクトが具体的にどの様なユーザー属性の、どの様な課題を解決するのかが明確になっているかどうかです。プロダクトが課題解決するユーザーの市場規模は、既存では小さいが、今後時間が経過するにつれて大きく拡大して行くものだと尚良いです。また、プロダクトを構成する技術要素が革新的であることは、それだけで競合優位性が生まれます。 プロダクトはブロックチェーン技術を活用することを詠いますが、その多くはブロックチェーンの特性を活かしきれていない場合が多いです。 また、ブロックチェーン技術を活用したプロジェクトの多くは「既存の市場を大きくディスラプトする可能性を秘めている」とよく言われていますが。そもそも、既存のマーケットを壊すことに対する必要性がなぜあるのかを明確に定義できていない場合が多いです。なぜ、変える必要があるのか? また、変えた場合にユーザーが享受できるベネフィットがあるのか? を深く考える必要があります。

プロダクト評価

  • プロダクトを説明する技術仕様。技術仕様書が徹底されており、主題の習得を実証していますか?
  • 少なくとも2つの顧客または潜在的な顧客参照呼び出し - 現在このプロダクトを必要としている人がいますか?
  • プロダクトはネットワーク効果の恩恵を受けていますか?
  • 競争上の差別化を招く可能性のある、技術的またはプロダクト的な利点がありますか?
  • プロダクトはブロックチェーン技術を必要としていますか?
  • ブロックチェーン技術の特性 (改竄不可能性 / 透明性 / ゼロダウンタイム etc...) を活かしていますか?

Community

プロジェクトの周辺にはコミュニティが生まれます。コミュニティはプロジェクトが大きくスケールする速度を加速してくれる為重要です。 コミュニティの重要性については、分散型アプリケーションプラットフォームであるEthereumのコミュニティ活動が模範になります。 EthereumはBitcoinに次いで大きくスケールしたプロジェクトの最たる例です。2015年7月に最初のメインネットがリリースされてから、現在も多くの機能改善と拡張が進んでいます。 この機能改善と拡張は、Foundarの方々の活動による影響が大きいのはもちろんなのですが、それ以上に周辺に存在するコミュニティによるサポートの影響が大きいです。 開発フレームワーク(openzeppelin)やWebウォレット(metamask)はFoundarの周辺コミュニティで生まれたツールです。これらのツールが仮に無かったとしたら、現在ほどEthereumが世界に大きな影響を与える規模に成長していなかったと想像できます。 なので、プロジェクトチームは活気に満ちた健全なコミュニティの育成が必要だと言えます。

コミュニティ評価

  • Redditコミュニティ(利用者数、日々の関与)
  • Slack、Rocketchat、Gitter、Telegram(メンバー数、日々の関わり)
  • チームは、健全なコミュニティを構築するために必要なコミュニティ特性(包括的、透明性、客観性など)を証明していますか?

Token Mechanics

トークンを評価するのは難解です。なぜなら、トークンには複数の用途と属性が存在しており複雑で、かつ成功パターンと失敗パターンのデータが多くないからです。 トークンは、ペイメント、ユーティリティ、セキュリティと用途によって大きく分類されます。また、ユーティリティはネットワーク上での扱い方の違いによりワークトークンと、バーン&ミントトークンに分けられます。 これらの属性と扱い方を理解し、トークンの評価額が大きくスケールする可能性があるのかどうかを見極める必要があります。

トークン評価

  • ユーティリティトークンである場合、デジタルサービスは有用であり、デジタルサービスの基礎となるネットワークは、長期的にサービスを差別化するリソース (ファイルストレージや、予測市場など)を集約しますか?
  • ワークトークンである場合、それは貢献したいと思っている強いネットワークが出現していますか? そして、その貢献するネットワークが提供するサービスは人々に役立ちますか?
  • セキュリティトークンである場合、トークンに長期的な競争上の優位性を与える証券の基礎となる技術はありますか?
  • チームはすべての市場参加者を考慮し、短期の資金調達ではなく、プロダクトの長期使用を最適化するために、公正かつ公平な方法でトークンを配布していますか?

Merket Selection & Timing & Suitability

マーケットの選択と参入タイミング、そして適合性は、プロジェクトのスケールに対する規模と速さに影響します。これはCryptoに限った事ではなく、全てのスタートアップ、新しい価値を生み出すサービスに共通する主題です。このマーケットを認識し判断するための指標は、1つでも欠けてはいけません。選択・タイミング・適合性の3つ全てを意識してマーケットを見る必要があります。 自分たちが新しい価値の提供を目指すユーザーが存在するマーケットの規模を把握することは、自分達の潜在的な経済ポテンシャルを認識するために重要です。

マーケット評価

  • 推定される既存のマーケットの経済規模はどれくらいで、その内自分たちの立ち上げるプロジェクトはどれくらいのシェアを獲得できる見込みがありますか?
  • ブロックチェーン技術を用いたプロジェクトがマーケットに参入した場合、どの様な変化が起きるか考えられていますか?
  • 既存のマーケットと入れ替えた場合、大きなシェアを獲得することが可能ですか?
  • 既に競合するプロジェクトが存在する場合、それらと比較して自分達のプロダクトがマーケットに適合できる理由はありますか?

まとめ

  • Crypto Assetsを定性的に評価する軸は大きく5つ存在する
  • 軸ごとの評価では、さらに細分化された質問事項があり、その回答を元に10段階評価で評価される

最後に

今回は投資の話の続きて、Crypto Assetsに対する定性的な評価の話を紹介しました。 海外では投資でもCryptoに対する注目が集まってきているので、今後はベンチャーキャピタルの動きにも注目していきたいです。

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