はじめに
こんにちは。新規事業開発室の山口 (@yamarkz) です。
昨今、ブロックチェーン技術への注目が世間的にも高まり、メディアでも大きく取り上げられるようになってきました。 最近のスタートアップ界隈でも「ブロックチェーン技術に関連した事業を行っていきたい」という話をよく耳にします。 また、2/27には大手IT企業である楽天もブロックチェーンを用いた事業を始めるというニュースを目にしました。
本記事ではスタートアップから大手企業までもが参入するブロックチェーン技術の領域において、現在どういったビジネスが成り立っているのかを調べ、まとめた内容を紹介していきたいと思います。
事業分類
※あくまで個人的な主観に基づいてまとめた内容です。
仮想通貨取引所
仮想通貨の取引所は最もわかりやすく、最も認知度の高いビジネスです。
取引所では仮想通貨の販売と取引が行われます。運営側は販売と取引に対して数%の手数料を主な収益源にしています。
新たに取引所事業を始める場合、事業開始までに必要な準備が多く存在します。 主に必要なものとしては、
- 暗号通貨の知識と技術
- 金融商品取引システムの構築と堅牢なセキュリティ対策
- 安定運用行うための運用基盤構築
- 仮想通貨交換業者登録
これらを揃え、新たに事業参入するのは障壁がかなり高いと言えます。
また、今後新たに日本マーケットに参入して大きなシェアを獲得していくのは難しいと考えています。 なぜなら、既に日本の仮想通貨取引所には大きなシェアを獲得しているプレーヤーが存在しており、今後新たにユーザー獲得を行うには多額の広告宣伝費が必要となるからです。巨額の資金を投入し参入できるのであれば話は別ですが、資金力の無いスタートアップが市場に参入していくのは厳しいと思います。
大きなシェアを獲得していくのは難しいと述べましたが、不可能ではないとも考えています。なぜなら、海外の主要取引所であるBinanceは取引所を開設してからわずか5ヶ月で24時間の取引量世界一の記録を出しているからです。開設後、およそ半年で世界トップの取引量を誇る取引所になったBinanceがどのような戦略でユーザー獲得を行い、成長させたのかを考えて見るとチャンスはあるかもしれません。
と、問いを投げる感じで先に文章を書いていたのですが、執筆後bitcoinerの平野さんが既にブログでbinanceの成長考察を紹介していたのを発見しました。 気になる方は、下記を参考にしてみてください。
(追記) 余談ですが、3日前にBinanceのCEOであるChangpeng ZhaoがLinked inにブログ記事を投稿しました。 そこでは、第2四半期で利益が 200億円超 出ているという衝撃的な数字が語られています。。。 これまで日本で創業後2年以内にこれだけの利益を叩き出した事業会社が存在していたでしょうか。。。? 衝撃的です。
これが、暗号通貨、ブロックチェーン技術領域のスケールです。
凄すぎる。binanceは創業後、2四半期しかたって無いのに、利益200億円超。
— 大石 Tetsu Bigstone (@bigstonebtc) 2018年3月3日
昨年秋に創業された企業ですよ。
これはベンチャー界隈も度肝を抜かされますね。https://t.co/rGzeq6SZM3
日本の取引所
ICO (Initial Coin Offering) プロジェクト
ICOとは、プロジェクトに関連した独自トークンを発行し、トークンを対価にプロジェクトを推進するための資金を調達する手段のことです。 ICO自体はビジネスというよりも資金調達の手段というのが正しい認識かもしれません。
ICOで調達した資金が正しく活用された結果、プロジェクトが成功し、価値あるサービスが提供されるようになった場合、そのプロジェクト内で利用されるトークンには利用価値が付加されます。 この利用価値が評価され、取引所で取り扱ってもらえることで、ICOで投資を行ったユーザーはそこで初めて投資して得たトークンをフィアット(法定通貨)に変えることができるようになります。これがICOで投資を行ったリターンの1つになります。 (※サービス開始前でもトークンが上場される場合もあります。)
ICOを行ったプロジェクト側はサービスが成長し、利用されることで売上を作ることができビジネスとして成立していきます。また、トークン上場に伴って自社で保有していたトークンをフィアットに還元し、新たな余剰資金としてさらに事業成長を加速させることもできます。
ICOによるビジネスモデルはパッとイメージすることが難しいです。
そんな中、日本でICOを成功させたALIS Projectのビジネスモデル図解がとてもわかりやすく紹介されているのでこちらを参考にしてみてください。
#ALIS のビジネスモデルについて不備がありましたので、アップデートしました。 ALISの方よりご指摘いただきました。 #ビジネスモデル図解シリーズ
— チャーリー (@tetsurokondoh) 2017年9月4日
不備の内容についてはこちらのツイートに記載しています。https://t.co/ogPalQTjnc pic.twitter.com/smvmLnV0sZ
革新的なサービスとマーケットがあればスタートアップでも大きなチャンスを掴む可能性があるのがICOです。 ただ、最近では詐欺的なICOも多く、ICO自体の信憑性が怪しまれています。 日本ではまだ明確な法規制などはないですが、海外を見るとICO自体行うことができない国も存在し、今後ICOを行うプロジェクトを始める場合は、国の法律の動きにも注意が必要になって来ます。
ICOを行なった注目プロジェクト一覧
マイニング
マイニング (検証作業) はブロックチェーン上で合意形成に用いるアルゴリズムに対して計算能力を提供することです。(BitcoinやEthereumなどでは)
マイニング事業はマイニングを成功させた時に発生する報酬を収益源にし成り立つビジネスです。
世界的に見ると現在のマイニングを主事業としている企業は中国に集中しています。これは、マイニングにかかる運用費用である電気代が中国が安いからです。
マイニング自体の詳細は下記記事を参考。
日本では、GMO社やDMM.com社が既にマイニング市場に参入しており、GMOは北欧に、DMMは金沢にマイニングファームを構築してマイニングを行なっています。 日本でも徐々にマイニング事業に対する認知が高まってきていると感じます。
マイニング自体はマシンがあれば個人でも簡単に行うことができますが、マシンを大量調達し、調達したマシンを安定稼働させる場所を確保して、大規模で行うとなるとそう簡単に行えるビジネスではありません。また、マイニングの利益はマイニングするコイン価格大きく依存しています。 仮にマイニングしていたコインの価値が暴落した場合、利益が見込めなくなるリスクもあります。その逆で大きな利益が生まれる可能性もあります。
マイニング事業は収益がコイン価格に依存しているのでハイリスク、ハイリターンになる可能性のある事業だと言えます。ただし、主要コインの価格が急に暴落するというのは市場規模から見てもあまり現実的ではないので、掘るコインを選べば安定した収益が見込める事業であるとも言えます。
マシンの調達や、場所の確保などは大変なので参入難易度は高めです。
日本の主要マイニング事業会社
ウォレット
ウォレットは仮想通貨を管理するためのもので、現実世界での現金を管理する財布に該当します。 ウォレットにも様々あり、アプリやWeb、ハードウェアのウォレットが存在します。ウォレットの詳細は下記参考。
現在、仮想通貨は買われ始めているものの、その多くが投機目的であり、サービスを利用するための対価として仮想通貨が利用され始めるのはもう少し先になりそうです。 ウォレットについてはまだまだ参入余地があると考えています。なぜなら、現在出ているアプリウォレットやハードウェアウォレットを調べても、実際に多用されているウォレットがまだ存在していないからです。(日本では)
カジュアルに使いやすく、様々な場面で利用できるウォレットを生み出し、仮想通貨の利用に対する敷居を下げるだけで多くのシェアを獲得していけると思います。
また、一般ユーザー向けのアプリウォレットだけでなく、事業者向けのコールドウォレットやマルチシグで管理できるセキュリティ面で安心できるウォレットを開発していくのもシェアを獲得していける可能性があると思います。
ウォレットは可能性に溢れており、技術力があればスタートアップでも参入していける余地が十分にあると感じています。
注目ウォレット
Dapps (分散型アプリケーション)
Dapps (Decentralized Applications) とは、ブロックチェーン上に構築するアプリケーションのことです。 昨年後半に話題になったCryptoKittiesはDappsとして成功した最たる例です。
CryptoKittiesではゲーム内で生まれるネコをユーザー間で交換するマーケットプレイスを用意しており、そのマーケットプレイス上で取引が行われた際に数%を手数料として受け取ることで収益を上げています。
CryptoKittiesのWhitePapperでは下記が述べられています。
CryptoKittiesはICOの乱用によるCrypto技術/市場の不信に対するアンチテーゼ的プロダクトであり、ICOに頼らない持続可能な収益モデルをつくり、検証することを目的としている。
ICOに頼らず、手数料型で収益モデルを作ろうという目的で立ち上がったのが CryptoKittiesだということです。 個人的には、ICOに頼らない新たなチャレンジを含んだ事業立ち上げを行うというスタンスは非常に好感が持てます。
CryptoKittiesのWhitePaperはこちらを参考。
Dappsは今後大きく成長してくる市場で伸び代が大きいです。伸び代が大きいですが、現在その伸び代を止めてしまっている課題があります。それが、スケーリング問題です。
Dappsを構築できるEthereumでは、トランザクションがブロックに取り込まれるまでに最速でも15秒前後必要となります。これは、アプリ内でトランザクションを必要とするアクションを実行するごとに15秒前後の待ち時間が発生するということです。 また、利用に対してネットワークに支払う手数料 (GasFee)も高くなっており、サービス利用価値に見合った手数料になっていません。
これらのスケーリング問題に対する解決策は、コア開発チームを筆頭に早急に解決するべき課題として改善の取り組みが行われています。 Dappsは不自由なく利用できる環境が整えば普及していくのではないかと思います。逆に環境整備が進まないと、Dappsの実利用は難しいと思います。
Dapps開発に関するまとめはこちらを参考。
Dappsでのマネタイズ手法はこちらを参考。
主要なDapps
技術コンサルティング
ブロックチェーン技術に精通した企業や開発チームがサポートを行うビジネス。海外ではBlockstreamやConsensysがそれに該当します。 具体的にはプロジェクト開発に参画したり、ブロックチェーン技術周辺のアドバイスを行います。
主要技術コンサルティング企業
ICOコンサルティング
ICOを行いたいプロジェクトに参画し、ICOが成功するまでサポートを行うビジネス。 現在、日本ではAnypay社がICOコンサルティング事業を行なっています。 ICOコンサルティング事業に関する詳細は、blockchain.tokyo #2 で発表していただいたCTO 中村さんの資料を参考にすると理解が早いと思います。
ICOコンサルティング企業
メディア
一括りにメディアと言っても狙うターゲットユーザーが異なるので様々なタイプのメディアが考えられます。
- 暗号通貨、ブロックチェーン技術に特化したメディア
- 暗号通貨トレーダー、投資家向けのメディア
- ICO情報のデータベース系のメディア
メディアは2017年で乱立してきました。仮想通貨系のSEOメディアは企業運営よりも個人ブロガーが台頭してきています。
メディアのビジネスモデルはシンプルで、ユーザーが満足するようなコンテンツを提供し集客を行います。集まったユーザーに対して最適な広告を表示し広告収入を得ます。これに加え、トレーダー向けのメディアでは、主要取引所への登録を誘導する子で発生するアフィリエイト報酬も収益源になります。
知識だけで戦っていける領域ではあるので、参入障壁は低いです。その代わり競合が多く存在するため競争が激しいです
主要メディア
学校運営
知識を知りたい人にわかりやすく教えるビジネス。究極は、知りたい人と教えたい人のマッチングなので知識がある人ならば誰でも始めることができると思います。 大勝ちするビジネスではないですが、大負けするビジネスでもないです。
ブロックチェーン技術はWEBやアプリとは全く別の概念なので、先行者優位が働きやすいです。なので、誰よりも先に知識を習得しそれをまだ知らないが知りたい欲求を持つユーザーにわかりやすくコンテンツを提供することで利益を拡大していけると思います。
まとめ
ざっくりとまとめました。
最後に
今回はブロックチェーン技術に関連したビジネスをまとめて紹介しました。広く浅く紹介するつもりでまとめ始めたのですが、思った以上に事業を行うチャンスが多く。紹介する文量も多くなってしまいました。。。
今回紹介した事業分類はあくまで、2018年3月時点のものであり、今後新たな市場と事業が生まれてくる可能性は大きいです。 1年後ブロックチェーン技術の領域がどうなっているかは誰も想像できないくらい早く変化するので、日々事業立ち上げのチャンスがないか探っていきたいです。
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